君は虫が苦手だ。
どんなに小さな虫だって。
蚊すらやっつけられない。
君の腕に蚊が止まったとしても、君は蚊をやっつけられない。腕を振り回したり、息を吹きかけたりするのが精一杯。
それで蚊が逃げなければ、君はただ血を与える。あとで痒くなることがわかっていても。
虫が苦手な君は、無駄に虫を殺したりなんかしない。
虫が苦手なこともあるだろうが、それ以上に君はやさしいんだ。
虫も殺せぬやさしい人。
そんな君が虫を追っ払うときもある。
蚊も殺せぬやさしい君が、虫を追っ払う。
ありとあらゆる手段を使って追っ払う。
どんなに小さくても見逃さない。
腕を振り回したり、息を吹きかけたり。
そんなやり方ではなく別のやり方で。
ただ血を与えることなんてしない。
あとで痒くなることはわかっているから。
虫が苦手なはずなのに、そのときだけ君は徹底的に追っ払う。
ぼくに近寄る悪い虫。
それを君はすべて追っ払う。
どんなに小さくても。
どんな方法を使っても。
君は虫も殺せぬ、やさしい人だから。
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